夕焼け止めクリーム

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美しい夕空のデザインされたチューブから手の平へ入道雲を描くようにクリームをのせて、両手でスリスリ伸ばしてから遠く晴れ渡る夏空へ夕焼け止めクリームを豪快に塗る。完全に止めることはできないけれど、これを塗っておけば空はいつもよりゆっくりと橙色に焼けていく。実際に空へ触れているわけではないはずなのに、クリームを塗っている時はその日の空の手触りが確かに感じられるし、手の平からクリームが消えていくのも未だにどういう原理かわからないが、私は煌めく朝の夏空を思いっきり撫でながら登校した。

ーー放課後。
大好きな色の空の下を、大好きな人と並んで帰る。

「なんか…今日夕焼け長くない?それに…」

夕空を見上げながら彼が笑う。

「不思議な模様」

クリームの塗りムラのせいで一部斑に焼けた夕空。こんなことならここにも塗っておくんだった…。恥ずかしさで真っ赤に染まっているであろう自分の頬を私は両手で覆った。
青春
公開:24/07/13 18:30
更新:25/03/12 21:27

花笑みの旅人( 気の向くまま )

作品を開いてくださりありがとうございました〜

時々気まぐれに投稿するかもしれませんが、基本的には引き続きお休みです。

2025.5.8

 

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