刹那の恋

2
3

「やぁ、また会ったね。」
「えぇ、ごきげんよう。」

静寂の中、出会った二人はどこかぎこちない。
彼女は彼を見つめ、ゆっくりと瞬きした。気品ある猫の様なその目を見、彼は慌てた様に口を開く。

「君は大忙しだね。洗顔にハンドソープ。今や何でも泡だ。人間は泡の優しさが大好きなのさ。」
「えぇ。でも、人が貴方に寄せる想いに比べれば淡いものよ?」

しっとりとした口調。そう言われた彼はますます慌て、火がついた様に捲し立てる。

「俺なんか騒がしいだけさ。ドーンと突っ走って、大きな音を立てて弾け飛ぶだけだし。」
「でも美しいわ。」

瞬く星を写した様な瞳に見つめられ、彼は言葉に詰まる。綺麗なのは儚く消える君の方だと言いたかった。

「……呼ばれた。」
「私も。」

片や派手に散りゆく花火。
片や音もなく消えゆく泡。

出会えるのは、弾けた後に訪れる一瞬の静寂の間。

「……またな。」
「えぇ……。」
恋愛
公開:24/07/16 19:09
更新:24/07/16 21:06
クラフトビールコンテスト 花火

ぽんず

ぽんずとかねぎとか薬味と調味料。
(整理したSSはNovelDays等にあります)
http://lit.link/misonegi

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容