報告アプリ

ささいな報告を大げさに褒めてくれるアプリをダウンロードした。
「おはよう。今日は六時に起きられたよ」
『やっだ〜、チルチルミチルってば天才！』
と、まぁこんな具合だ。ちなみにチルチルミチルは本名をもじって設定した愛称である。友達が少なく消極的な俺にとっては、暇つぶし兼自己肯定感爆上がりアイテムとして大変重宝している。
「ダイエット中だから、昼はふかしたさつまいもにしたよ」
本当はゲームに課金し過ぎて金欠だから仕方なく食べているだけだが、報告アプリは手放しに俺を讃える。
『ビバ！　食物繊維！　よっ！　未来の株式会社イケメン代表！』
「とうとう株式会社設立かよ〜？　ますます多忙確定！　困っちゃうなぁ～♪」
『あらっ！　チルチルミチルは昭和歌謡にも造詣が深いのね！　さすがだわ！』
「アハハ！　最高！」
後ろに上司が立っていたことに気づくのは、三十秒後のことである。