何もできない、私にできたこと

難病を抱える私を診て、多くの医者が匙を投げた。
もう手遅れだ。どうにもならない。
そう言って、私の前から去っていった。
「クズどもめ。患者を見捨てて逃げるんざ、医者を名乗る資格なんてねぇ」
最後に残ったのはこの人。強面で口が悪く、皆から嫌われている先生。
この人だけは私を見捨てなかった。文句を言いながらも、私の治療法をずっと探してくれていた。
長い長い投薬期間。辛い辛い延命処置。
髪が抜け、肌が荒れ、私が私でなくなっていく。
その代わり、私の病気は回復へと向かう。
そしてついに、病気が治るその日を迎えた。
先生のおかげだ。先生に何か恩返しをしたい。だけど私に何が出来るだろう？先生、何かして欲しい事ありますか？
「なら、俺を嫌わないでくれ」
…それだけでいいのですか？私が先生を嫌うわけありません。
だって私、先生を愛しているんですよ。
私が私でなくなっても、この心だけはなくしていない。