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潮の引きたる浜扇の白砂染めたる夏の夕日。
潮風に人払いをさせて、漣の君が静かな海岸沿いを一人そぞろ歩く。美しい銀色の長い髪は青藍色の衣へ波を描き輝いている。

「夏は海、海は夏と思われておるようだが…私は秋が好きじゃ。豪放磊落な夏殿より、泰然自若な秋殿の方が私と相性がよいとは思わぬか?」

漣の君の問いかけに、浜に寝転んでいた貝殻達がカチカチカチと一斉に音をたてて激しく同意すると、気分をよくした漣の君が扇で口元を隠し上品に笑う。密やかな君の笑い声で扇には波が起こり、潮と浜とが天下分け目の夏戦。海扇浜扇となってザァザァと音を立てる。

水平線へと夕日が沈み、群青色に混ざり合う海と空には点々と星明かり。しばし浜辺で静かな波音に聞き入っていた漣の君だったが、心地のよい夜風に興がのり、貝殻達の鼓に合わせ、扇とともに優雅に舞う。

潮の満ちたる海扇の揺らめく波は月光に輝いていた。
ファンタジー
公開:24/07/07 21:06
海千山千→海扇浜扇 扇が描く 潮の満ち引き、海岸絵巻

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

 

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