短冊流し

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七夕祭りの夜。会場の天乃川に着いた時には、大人たちが撤収し始めていた。

ーー間に合わなかった

願いの書かれた短冊を川に流すと叶う『短冊流し』。島を離れる前に皆と流したかった。

「大丈夫だよ」

短冊を握った右手を両手で包んでくれたのは、すみれ先生だった。私と先生は川のそばにしゃがみ、短冊を川に流した。短冊は星に姿を変え、下流に流れていった。

暗闇に染まる川を心細く流れる小さな星を見ていると、先生は私の手をひいた。

私達は流れていく星を追い、堤防沿いを歩いた。星はまるで歩幅に合わせるかのようにゆっくり流れてくれた。

「先生はどんな願いを流したの?」
「私は流してないよ。だって」

潮の香りがした。河口には皆が流した短冊の星が眼前に広がっていた。私の星は皆の願いと重なっていった。

「会いにきたから」

そういうと、先生は波止場に座る釣り人の背中に小さく、ただいま、と言った。
ファンタジー
公開:24/07/07 15:07
更新:24/07/07 16:15
SSGすみれ祭り

イチフジ( 地球 )

マイペースに書いてきます。
感想いただけると嬉しいです。

100 サクラ

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