私は魚になりたい

宇宙ステーションから地球を見下ろす。
かつて水の惑星と呼ばれていた星は、完全に海に覆われてしまった。
海面上昇が深刻化し、海の上に拠点を作るも異常気象・大気汚染・温暖化の影響等でそこに人が住むのはほぼ不可能だった。
海中に住まいを移すくらいなら、宇宙へ移住した方がいい。
そうして私達地球民は宇宙への引っ越しを余儀なくされた。
ここでの暮らしは快適だ。SF映画もかくやと言った高機能設備。
多くの人が地球よりはるかに暮らしやすい生活に慣れ親しんだ。地球を見て、戻りたいなんて思うのは私くらいのものだろう。
私は魚になりたい。そうすれば、今も私はあの星にい続けただろう。
あの海が恋しい…こんな感情もいつか私は忘れてしまう。
宇宙ステーションはこれより、人が住める惑星へと移動する。長い長い、宇宙の旅の始まりだ。
私は流した涙を船外に排出する。この涙が、地球へと届き、海の一部になってくれますように…