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棟梁が土間のコンクリートに糸を弾くと、パシッ、パシッという小気味よい音と共に黒い線が引かれていった。それは新居の平面図で、音を立てているのは「墨入れ」だということを、わたしは知っていた。なぜならそれは、わたしの名前の語源になった道具だから。とはいえ、実際に使っているところを見たのは始めてだ。
外周から間仕切り壁と進み、いよいよ二人で大喧嘩しながら決めた浴室にさしかかる。こだわりは柔らかな壁の曲線。さあ、お手並み拝見と思ったら、棟梁は微妙に糸を撓ませて、難なく曲線を弾いた。
わたしは感動を覚えながら、わたしが彼と出会うまでの時間や、出会ってから結婚するまでの時間、それぞれが、それぞれに移動してきた距離なんかを思った。それは信じられないくらい長く、曲がりくねっていたような気もするし、たくさんの最短距離の集積だったような気もする。
その全てが、ここに描かれている。ここに二人で生きていく。
外周から間仕切り壁と進み、いよいよ二人で大喧嘩しながら決めた浴室にさしかかる。こだわりは柔らかな壁の曲線。さあ、お手並み拝見と思ったら、棟梁は微妙に糸を撓ませて、難なく曲線を弾いた。
わたしは感動を覚えながら、わたしが彼と出会うまでの時間や、出会ってから結婚するまでの時間、それぞれが、それぞれに移動してきた距離なんかを思った。それは信じられないくらい長く、曲がりくねっていたような気もするし、たくさんの最短距離の集積だったような気もする。
その全てが、ここに描かれている。ここに二人で生きていく。
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公開:24/07/04 21:10
更新:24/07/04 21:12
更新:24/07/04 21:12
#SSGすみれ祭り
「墨入れ」物語Ver.
新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。
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