唄がきこえる

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 少年が街を歩いていると、ある夫婦に出会った。彼はその二人の関係を美しいと感じ、一輪のすみれの花を贈った。
 その花は、彼が恋をした花売娘からもらったものだった。
 少年はかつて、毒薬を使って様々なものを美しいまま留めておくことができた。
 例えばとある詩の一節、思い出の中の夕焼け。朝露の滴る、新緑の一枚。
 花売娘を知ったのも、彼女を美しいまま留めておいてほしいと、ある人物から依頼されたからだった。けれど、彼はその対象に恋をした。
 花売娘に恋をしてからは、静止させなくてもいい美があることを知った。
 それ以来彼は、美しいもの、美しいと感じたものに花を贈るようになった。
 今も彼の心の中には、恋をした少女がよく、花売りのときに歌っていた歌が流れている。

 薔薇はいかが
 すみれはいかが

 その歌声には、脳の内側に潜り込んで、色とりどりにひらくような、花の香りが宿っていた。
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公開:24/07/04 17:54
SSGすみれ祭り

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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