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それは何に使うものなのか検討もつかなかったし、何につかうものなのかを教えてもらった後も、なぜこんな形に落ち着いたのかが理解できなかった。小気味よく弾けば響く楽器のように。その迷いの無さがうらやましかったりもする。やれることは少ない。というより、たった一つのことしかできない。引っ張り出されて弾かれる。それは点と点とを結ぶ直線を描くためだけに存在する。その潔さ。無味乾燥な平面の、有限回の始まりと終わりの各点を結ぶべく、墨に染まった糸を引き出してパチンと弾く。次の始まりと終わり。また次の始まりと終わり。遊んでいるかのごとき繰り返しが現実を切り結んでいくと、紆余曲折する痕跡は全て、ある構築物の軌道だったと気づく。予感が希望に、希望は夢に、夢は形に、そして設計図が描かれ、それを現実へ写す道具、いや楽器こそが「墨入れ」なのである。だから「墨入れ」は希望で夢を奏でる楽器なのです。おめでとうございます。
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公開:24/07/03 22:21
#SSGすみれ祭り
スミレの語源との通説
おめでとうございます
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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