芸は身を助ける

俺達は漫才がメインのコンビ。
いつか大きな舞台に立ち、お茶の間を大爆笑させる事を夢見ている。
が、それには一つ問題がある。俺の相方、ネタを飛ばしがちだ。セリフを忘れて、よく無言になる。
だから俺は舞台に虫取り網を持って立つようになった。
相方が飛ばしたネタを、虫取り網でキャッチする。
相方はそれで飛ばしたネタを思い出す。
それが大爆笑を生み、俺達は大きな舞台に立つ権利を得た。
…その大事な日に相方は事故に遭った。
意識不明の相方は意識を俺の待つ舞台袖まで飛ばした。
ネタだけでなく意識まで跳ばせる新ネタだと説明すると観客は大喜び。俺達はお茶の間を大爆笑させた。

舞台を降りると俺は相方のいる病院へと急ぐ。…遅かった。
相方の顔には、白い布がかけられている。
「そのボケは笑えねぇよ！」
俺のツッコミに、相方の意識が相方の体に突っ込まれ、相方が意識を取り戻した。
芸人やっていて、本当に良かった。