回想バス

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夕暮れの停留所に一人で待っていると暗いバスがやってきた。行き先表示は「回想」。停まってドアが開く。乗っていいですかと聞くと、どうぞと運転手が応える。
車内に客はいない。席に座るとバスが動き出した。とっぷり暮れたはずの道は明るく小さな校舎が見える。バスが狭い校庭をぐるぐる回る。校庭には誰もいない。それから住宅街を走る。家々に灯がついているが青空だ。児童公園で子供をみかけたがバスは走り過ぎた。気がつくと海辺を走っている。穏やかな波にサンセットの時刻。日が沈むのを窓から見ていると急に林のなかに入った。「どこに行くのですか」と聞くと運転手は「もうすぐ着きます」と言う。林のなかの灰色の建物の前でバスが停まった。ぞろぞろと人が歩いている。みんな黒い服を着ている。ああ、ここに来る予定だったんだと思い出した。「ありがとう」と声をかけて降りるとドアが閉じてバスは走り去った。行き先表示は「会葬」になっていた。
その他
公開:24/07/03 09:00

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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