2
4

「もし生まれ変わったら……私だってわかるように、しるしをつけてあなたの前に現れるから……」必ず見つけて、と妻はささやいて、眠るように息を引き取った。
まだあたたかい手を握りながら、「わかった。約束だよ」と答えた僕の声は、君に届いただろうか。確かめる術などないまま五十年の時が流れた。僕はすっかりおじいさんになってしまったけれど、妻の生まれ変わりには相変わらず出会えていない。縁あって家族になった三毛猫のミーコを溺愛する毎日だ。

「おぉ~い! ミーコ! ご飯だぞ〜!」

窓辺で毛づくろいしていたミーコを振り返った時、ハッとした。背中を丸め、前足を交差させたミーコの脇腹に、ある特徴を見つけたからだ。そこには『しるし』という模様がはっきり表れていた。

「そうか。おまえが生まれ変わりだったんだなぁ」

文字通りのしるしに苦笑いしながら、ミーコの好物をたくさん皿に入れてやった。
その他
公開:24/07/02 22:21

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容