山中の無人販売所

県境の山道にある、小さな無人販売所。
近くの集落で農業を営む儂らが、ここを訪れてくれた人を思って格安で野菜を販売しようと始めた良心市。
ここを通る人の多くが車を停め、新鮮な野菜に目を輝かせては箱の中にお金を入れてくれる。
だが中には、金を払わず野菜を持って行く輩がいる。
それどころか箱を破壊し、中に入っているお金まで奪う輩もいる。
この前なんてその上、盗んだ野菜を転売しようとした輩がいた。
そんな輩に狙われてしまえば、野菜は諦めるしかない…だが、儂らだって何も手を打っていないわけではない。
実はこの無人販売所、共同経営に参加しているのは何も集落に住むジジババだけではない。
実はこの無人販売所、悪魔も出資している。
故に金を払わず野菜を持ち去ろうものなら、永遠に山道から抜け出せなくなる。永遠に県境をさまよい続ける。
悪魔はそんな哀れな悪人の魂欲しさに、儂らの無人販売所に協力してくれている。