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滲んだ涙で見慣れた風景がぐにゃりと歪む。
仕事帰りの夜道を照らす街灯も、私を慰めるように大げさに輝いて見える。漠然と不安が明日を曇らす日々に涙が溢れて、その場で立ち止まり項垂れていると、俯く視線の先の路面を、眩しい光が私へ呼びかけるみたいにチカチカと明滅した。光は以前からそこにあった何の変哲もないカーブミラーから放たれたもので、夜中なのに鮮やかな夏空を映して佇んでいた。しばらくすると、今度はカーブミラーの向かいにある家で毎年咲くカモミールの花とそれを見て微笑む私が映しだされた。そうだ、何度もこの花の可憐さに元気をもらったな…。その後も、百面相で春夏秋冬この道を通る私がミラーに現れ、そういえばこんな日もあった…と懐かしみつつ、次第に笑顔が戻ってくると、カーブミラーは最後にニカっと光って元の星空をクリアに映し出した。

…ありがとう。
道だけじゃなくて、私の明日の見通しもよくしてくれたんだね。
ファンタジー
公開:24/07/07 00:05
明鏡止水→明鏡止涙 春夏秋冬、日々、百面相 見通し良好、予約投稿!

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

いつもご訪問ありがとうございます。
元:ネモフィラは咲うです。大原さやかさんのラジオ「月の音色」では、ペンネーム:花笑みの旅人として投稿しております。
物語を読んでくださったうちのどなたか一人にでも、笑顔になってもらえたらすごく嬉しいです。

すこしおやすみします。

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