式場にて

「よし、これで完璧だ」

結婚式場からのサプライズ演出を用意していた田原は満足げだった。

式場の各テーブルには、熱々の鍋と本日の食材を用意。お色直し後にお客様を回って、鍋に鳥ひき肉を入れる【つみれサービス】の準備は整っていた。

「主任！　大変です！」
「どうした？」
「新婦の名前、つみれさんじゃなくて、すみれさんです！」

田原は愕然とした。披露宴まであと１時間。

時間は刻々と迫るし、鍋はコトコトと出汁る。



「主任！　これ見てください！」
「そうか、良し。このままいくぞ」

披露宴はスタートした。そして鍋サービスの時間。


「皆様、お手元のお皿を手にしてください。新郎新婦が今作りましたつみれをその皿の中のポン酢にいれて、ポン酢みれとなります。本さんと結婚して『本すみれ』になった、ぽんすみれさんをイメージした・・・」

「主任！　苗字の読み方は、ぽんじゃなくて、ほん！」