すみれ

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数年前に越してきた島は、海と空と、紫のすみれの島だった。
美しい島生活は希望に溢れて、仕事も頑張れたし、彼氏もできた。そして明日はその彼との結婚式なのに。
用意した純白ドレスが、どんどん青に染まってく。私のマリッジブルーを吸いとって。

私らしく生きたいと願って島にきた頃、私の未来は真っ白に輝いてた気がする。私なりに頑張って、〝私らしさ〟が輪郭を描くたび、〝私〟はこの島の海と空の青で塗り潰されたような気持ちになった。

「どうしよ……」
困っていると、彼が真っ赤なすみれの花束を持ってきた。私が言い訳しかけるのを遮って、
「この島のシンボルの、赤いすみれだよ。外のすみれは海と空の青を吸って、紫に咲くんだ。最初からじゃなくて、いろんな色が混ざった紫だから、この島のすみれは綺麗なんだよ」

花束が紫に染まって、ドレスが白に戻っていく。
そっか、私はまだ、色を集め始めたばかりの、この島のすみれだ。
青春
公開:24/07/05 15:51
#SSGすみれ祭り

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