練男と蒲子

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「親父も本心は賛成だと思う」
「私の父もきっとそうよ」
俺の親父は山菜饂飩が名物の饂飩屋で、彼女の父親は蒲鉾屋店主だ。だが仲が悪い。
「練った食べ物を作る者同士、わかりあえるはずだ」

「娘は男らしく根性のある奴にやりたい」
「あります!」
「なら、儂の蒲鉾の原料となる魚達のいる海を泳いでみろ!」
彼女の父親がブイの方を指さす。
そんな…山育ちで泳ぎが苦手な俺に出来るわけが…だが…。
「やります!」
彼女が目を見張る。
「よし、ではあそこまで行って戻ってこい。いいな?」

約束の日、俺は勢いよく泳ぎ出した。だが、折り返し地点に近づいた所で限界が来ようとしていた。
腹が減り、頭もぼうっとしてきた…。
しかも、小船に乗った親父の幻覚まで見えてきた…。

彼は無事戻ってきた。彼の父親がすり替えたブイのお陰だ。
それは、饂飩粉でうちの商品の竹輪に模したブイ。
その名も”チクワブ”イを食べたのだ。
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公開:24/07/02 08:00
更新:24/07/02 06:16
#SSGすみれ祭り ちくわぶ 二人のようにお幸せに

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