梅雨が明けたら

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 天気予報士が梅雨入りを発表した日、彼女は家を出た。バイトから帰宅すると、既に彼女の姿はなく、隙間だらけの部屋だけが残されていた。彼女の居ない部屋からは、急に酸っぱい臭いが立ちこめたような気がした。
 机上に彼女の筆跡を確認した。コピー用紙の右上に「拝啓」、左下に「敬具」とだけ殴り書かれた、粗末なものだった。私はその用紙を丸めて、屑籠のできるだけ奥の方に押し込んだ。
 梅雨入りをしたというのに午後からは晴れだった。雲の隙間から顔を覗かした太陽が私の神経を逆撫でする。まるで、今の惨めな姿を1番に嘲笑いにきているような気がした。
 彼女がキャリーケースに荷物を詰めるところを想像する。しかし、どんな表情をしていたのかは分からなかった。
 梅雨が明けたら彼女は戻ってくる。縋るものがない私には、梅雨を抱きしめ、夏を信じるよりほかなかった。私は屑籠から手紙を取り出し、皺で薄れた彼女の筆跡を目で追った。
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公開:24/06/30 21:32
更新:24/07/01 01:33

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