地の球、海の球

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海面にぷかぷか浮かんで空を眺める。
真っ青な空を見てると、自分が空にいて海を眺めてるみたい。
まぶしい太陽があるから、あっちが空なんだ、そう思える。
海と空、それだけの世界。どこまでが海で、どこからが空なのか。
境界線があいまいな、青い世界が広がっている。

地球温暖化が進み、海面が上昇。この星から陸地が失われた。

「陸、って知ってる?」
隣に浮かんでいる妹に尋ねる。
「知ってる。学校で習ったばかり」
「陸は、国っていう単位に区切られていたんだけど、国を大きくするために争いまでしていたんだって」
「みんなで仲良く暮らせばいいのにね」

背中に音波を感じたので、海面に耳を当てる。
「あ、お母さんが呼んでる。お昼ごはんだって、戻ろうか」
「うん。お昼ごはん、なにかなあ」

二人はヒレを動かして、暗くて深い海の底へと帰っていった。

この星の名は、【海球】。
大昔は【地球】と呼ばれていた。
ファンタジー
公開:24/06/27 17:00
更新:24/06/27 16:43

もりを

400文字という制限のなかで、あれこれと言葉を考えるのが楽しいです。最近では、54字の物語を書くことにもハマっています。

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