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子供の頃、家の戸棚の菓子箱には、茶筒に入ったエイセイボーロが必ずあった。
「ほら、ボーロ食べぇ」
外で遊んで帰ると、祖母が戸棚の奥から茶筒を出し、決まって一掴み握らせてくれたものだ。白くて真ん丸で、子供の指でも抓める小さな軽い焼き菓子だった。口に入れれば噛む前に溶けて、砂糖の甘さがいっぱいに広がった。
実家から独立し、菓子箱の茶筒もエイセイボーロも、遠い日の思い出になってしまった。
残業終わりの深夜、コンビニで何となく買った袋売りのボーロを道々かじり、記憶の味ほどには甘くない事に苦笑しつつ空を仰ぐ。
七夕を控えた天の川には、カササギの代わりに茶筒の橋が架かっており、白くて丸いエイセイボーロの粒々が光っていた。
手のひら一杯を繰り返し、数えきれないほどもらって大きくなった。あの小さなボーロたちは、私を見守る衛星になったのか。
空に向かって差し伸べた手に、ボーロ星の光がころころと弾んだ。
「ほら、ボーロ食べぇ」
外で遊んで帰ると、祖母が戸棚の奥から茶筒を出し、決まって一掴み握らせてくれたものだ。白くて真ん丸で、子供の指でも抓める小さな軽い焼き菓子だった。口に入れれば噛む前に溶けて、砂糖の甘さがいっぱいに広がった。
実家から独立し、菓子箱の茶筒もエイセイボーロも、遠い日の思い出になってしまった。
残業終わりの深夜、コンビニで何となく買った袋売りのボーロを道々かじり、記憶の味ほどには甘くない事に苦笑しつつ空を仰ぐ。
七夕を控えた天の川には、カササギの代わりに茶筒の橋が架かっており、白くて丸いエイセイボーロの粒々が光っていた。
手のひら一杯を繰り返し、数えきれないほどもらって大きくなった。あの小さなボーロたちは、私を見守る衛星になったのか。
空に向かって差し伸べた手に、ボーロ星の光がころころと弾んだ。
ファンタジー
公開:24/06/29 19:01
SSGお菓子パーティー
時々無性に懐かしくなるお菓子
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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