旅美糖

目の前に広がるネモフィラ畑をガラス瓶に詰まった旅美糖越しに見つめる。ビー玉みたいな透明の旅美糖へ、縮小された空色の花の波がそのまま写し取れたのを確認すると私は微笑む。
旅で出会ったあの風景や空気を、もう一度味わいたいと思ったことがある人には、旅美糖との旅をお勧めする。例え同じ場所を再び訪れても、その時その場所に居合わせる人や動物、風や花や音や香り…それら全ての条件が完全に揃うことはないから、旅の味とは移ろうものだ。しかし、旅美糖にその味を写し取れば話は別。

旅から戻ると、私は早速今回の旅美糖を一つ取り出し口の中で転がした。視界いっぱいの青空とネモフィラ、柔らかな風の肌触りと香り、人々の賑わいをゆっくり味わう。
私はこの旅の味を、夢を追って留学した友人へお裾分けすることにした。たまには日本の美しい風景を堪能して欲しいというのもあったが、何よりネモフィラの花言葉が「どこでも成功」だったから。