天ぷら不眠

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 とある天ぷら屋で、天ぷらになるくらいなら何とかして逃げ出してやると、水槽の中から厨房を毎日見ているエビは考えていた。しかし、逃げ出すためにエビの尻尾のキック力を利用して飛び跳ねたとしても厨房の床に落ちるだけだ。そんな混沌とする日々が続き、エビは不眠症になっていた。

 眠れなくなって十日間が過ぎた。エビは体もフラフラしているようだ。心なしかほっそりとなっている。天ぷら屋の大将は痩せ細っていく水槽のエビを見て焦った。早く天ぷらにしてしまわないと使い物にならなくなってしまうと心配になったのだ。

 この店の目玉商品は野菜のかき揚げ天ぷらだ。不景気のせいかエビの天ぷらの注文が入らない。売り上げも低いし利益も出ない。大将もまたエビ同様に不眠症になってしまった。

 そんな大将を心配していた女将も天ぷらを見るたびに不眠になり、たまらず夫婦で病院に行くと「天ぷら不眠」という不思議な病名を告げられた。
ファンタジー
公開:24/06/24 09:44
更新:24/07/09 15:00

松浦照葉( 福岡県 )

IT業界を卒業し、小説執筆中です。
普段はnoteでショートショートを投稿しながら、AmazonとAppleと楽天で小説、実用書の電子書籍を販売中です。
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