ベランダでの出来事

人里離れた山奥で、私は牧場を経営している。
私の朝はベランダに出て、屋根の上に鎮座しているプロペラ戦闘機を動かす事から始まる。
戦闘機と言ってもこれには翼がない。プロペラの回る音。エンジンは轟々と唸る。そんな音を発するだけの装置。
だが、その音に山に棲むドラゴンが反応する。
雄叫びを上げ、大きく翼を広げ、空を舞う。
私は十頭のドラゴンの姿を確認するとエンジンを切り、戦闘機から降りる。今日も皆元気そうで何よりだ。
ここは世にも珍しいドラゴン牧場。今、空を飛んでいる十頭は私が卵からふ化させた可愛い子ども達である。
体はずいぶんと大きくなったけど、中身はまだ子供のままだ。
私がこうして毎日、ドラゴンの声によく似た目覚ましをしなければ起きてこないのだから。
暫くすると十頭は地上へと降りて来る。
そして私がベランダに用意したご飯を美味しそうに食べる。
そろそろベランダを大きくする工事をしなきゃな…