不満泥棒

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毎日毎日、口を開けばとめどなく不満しか言わなかったAが、不満を言わなくなった。聞けば、目覚めたら妙に気分がスッキリして穏やかだったのだという。

「見てくれ!黒猫が横切ったんだ!前は苛々したが、よく見れば可愛いやつなんだよ。」

そう言って幸せそうに待受にしていた。

隣の夫婦喧嘩も最近は聞かない。癇癪持ちだった五丁目の爺さんも、にこにこ保育園バスに手を振っていた。

「不満泥棒の噂って本当なのかもな。」

そんな事を思った。


そう、不満泥棒は本当にいた。

ある科学者が絶望し、世界を混沌に貶めようと不満収集装置を作った。
集めた不満を一気に放出させてやろうと考えた。


だが、人々の不満がなくなった世界は平和になり、科学者もはじめはその事に不満を抱いたが、いつしかその不満を忘れた。

「本当は、世界を終わらせようと思って作ったんです。」

平和賞を受賞した科学者は、そう言って笑った。
SF
公開:24/06/25 23:51

ぽんず

ぽんずとかねぎとか薬味と調味料。
(たまに作品整理をします。整理したSSはNovelDays等にあります)
http://lit.link/misonegi

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