ベランダでの出来事

私は昔、山猫軒をを訪れた事がある。
あの時の私はブラック企業に勤めており、人生に絶望していた。
だから山猫軒が目の前に現れた時、命を捨てる覚悟で店に入った。
山猫軒は噂通りの注文の多い店。私はそれに従う。会社の仕事に比べたら、こんなの楽なものだ。
そしてついに訪れた奥の部屋。そこは椅子やテーブルの並ぶ食堂といった感じの場所だった。
暗い店内。私の姿を見つけやすいようにと窓辺へと向かう。どうやらここから出られるみたいだ…
逃げるつもりはない。だが窓の向こう、ベランダ席がとても素敵だったのでそこで待たせてもらった。
美しい月をただただ見つめる。いつの間にか、私の回りには猫が集まっていた。
一匹の猫が目を閉じたのを見て、私も同じように目を閉じる。
久しぶりに穏やかな眠りが訪れた。

目が覚めると、私は自宅のベランダ寝ていた。
スッキリした頭で今日は何をやるべきかを考え、すぐ退社届を書き始めた。