ベランダでの出来事

喫煙者にとって肩身の狭い時代になったものだ…
ここは俺の家だというのに、同棲中の彼女から「臭くなるから部屋の中でタバコ吸わないで！」と怒られ、俺もホタル族の仲間入りだ。
今日もベランダでタバコをふかす。そうしていると、隣の部屋のベランダからシャボン玉が飛んできた。
「こんにちは！」
小学生くらいの男の子がシャボン玉ストロー片手に挨拶してきた。
急いでタバコの火を消す。子どもの傍では吸えない。
火を点けたばっかりなのに…と、ため息をつく。
「良かったら、一緒に吹きませんか？」
男の子は俺に新しいストローを差し出してきた。
口寂しい事もあり、俺はストローを受け取るとふ～っと吹く。
口の中に残った僅かなタバコの煙がシャボン玉の中に閉じ込められていた。
それを男の子と二人で見つめる。
「あの煙は何ですか？」
目を輝かせる男の子に「あれは玉手箱の中身だ。あの煙を吸うと歳を取るぞ」と俺は冗談で答えた。