いなれらじんし

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私は自分の子を亡くしたのだという。
どれだけ記憶を手繰り寄せようと、我が子の顔さえ思い出せないのだ。
それもそのはずだ。

事故に遭い、数か月が経っていた。
小さな村で起きた不幸な災害だった。
土砂崩れに巻き込まれた家屋倒壊により、みな生き埋めにされたのだと。
医者の話では意識不明である期間が長かったこともあり、記憶が戻るかどうか定かではないとのことだった。

子の父親だという彼の家に住むようになり、気付いたのだ。
記録を残していない。証明するものが何もないのだ。
証拠が無いのなら事実でないことを真実にすることだって容易いことだ。

ここは小さな村だ。なぜ今まで気づかなかった?
そう、自分には子供なんていなかったのだ。
それなら彼も、ただの他人ということになる。

誰も信じてはくれなかった。
異常なのは、私らしい。そんなはずはないのだ。
ミステリー・推理
公開:24/06/20 12:08
更新:24/06/23 12:10

牟太郎( 関東 )

ホラーと動物が好き

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