刺し身資格

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昨今、刺し身の審査が厳しくなり、何でもかんでも刺し身を名乗れなくなってきた。

今日の試験会場にも、ありとあらゆる食材が、緊張した面持ちで試験開始を待っている。
一定の間隔で試験監督が並び、試験会場の空気を冷たく張り詰めさせていた。

そこにいかにもお硬い雰囲気を纏うスーツ姿の試験官が入ってくる。
彼は無言で封筒から試験用紙を取り出し、他の試験監督と協力してひとりひとりにそれを配っていく。

誰も何も言わない。
口を開く事は基本的にタブーだからだ。

開始のブザーが鳴り、受験生は用紙を捲った。
張り詰める空気の中、受験生たちの静かな熱気が時間と共にジリジリと広がり出す。

やがて全ての工程を終えた受験生が立ち上がり、颯爽と退出していく。
一人、また一人と。
終わりまでその場にいた者たちは、がっくりと肩を落とす。

刺し身は鮮度が命。

時間がかかっては、問答無用で不合格となるというものだ。
公開:24/06/19 22:26

ぽんず

ぽんずとかねぎとか薬味と調味料。
(たまに作品整理をします。整理したSSはNovelDays等にあります)
http://lit.link/misonegi

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