名画でショート018『死の勝利』(ピーテル・ブリューゲル)

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死は容赦なく迫ってくる。
山火事に戦争、疫病に飢餓。遠くにいたはずの死が、気が付いたら軍団となって、生者に向かって進軍している。
王侯貴族ですら死を避けることはできない。
いくら甲冑を身にまとおうと、いくら豪華な王笏を手に持とうと、金銀財宝を樽一杯につめこもうと、死が持つ砂時計からは逃れることは不可能だ。
生者は迫りくる恐怖から逃れるために、一時の快楽に気を紛らわせる。暴飲暴食にゲームと愛を。
だが豪勢な食事を運ぶ給仕は死であり、ゲームの審判も、これまた死だ。
カップルが死から離れた場所で、音楽を奏でている。だが、二人の背中側で伴奏のバイオリンンを弾いているのも、やはり死だ。
遠くの山で、斬首されている罪人がいる。
所詮はわずかな時間の差でしかない。
死は全ての生者を押しつぶし、そして去っていく。永遠のかたなに。
その他
公開:24/06/19 22:22

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