怪談2・お手伝い

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 私が小学四年、妹が二年生だった時のことだ。
 夜だった。
 母が「ゴミを捨ててきて」と言った。
 いつものお手伝いだ。
 母はとても忙しい人だったから、私と妹がいつも家事を手伝っていた。
「お願いね」
 玄関の所に黒いビニール袋が数個置いてあった。
 半透明じゃないし、持ってみると重いし、第一明日は生ゴミの日じゃない。
 そんな私の危惧を察してか、母はなぜか近くのマンション建設地に持って行くように言った。
 ゴミルール違反だと察した私は、黙って指示に従った。
 建設地には、時々顔を見るおじさんがいた。
 私と妹が持って行ったゴミ袋を穴に放り込んだ。
 明日コンクリを流すのだと、おじさんは独り言のように言った。

 翌日、寝たきりの祖母がいなくなっていた。
 母は何も言わなかった。
 父も近所の人も、私も妹も、誰にも何も言わなかった。
 何事も無かったように笑顔で暮らしている。
ホラー
公開:24/06/18 22:17
更新:25/04/09 11:29

堀真潮

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