雷神様の太鼓

私の故郷は米作りが盛んな田舎町。「金はなくても米はある！」が謳い文句の明るい町だ。
ここは記録上、不作に見舞われた事がない。
少なくとも江戸時代から豊作が続いており、江戸の大飢饉もどこ吹く風だったようだ。
その秘密は神社に収められた太鼓にある。
この太鼓はその昔、雷神様から賜ったとされる神具だそうだ。

一つ叩けば雨雲を呼び、二つ叩けば雨が降る。三つ叩けば雷起こし、四つ叩けば雷神様の到来に稲穂が首を垂れる。

毎年夏祭りで披露される太鼓のお囃子で、必ず雷雨に見舞われるのだから迷信だと言い切れない。
故に太鼓に悪戯しようものなら、大人達から雷と拳骨を落とされる。
そうと分かっていても、こっそりと太鼓へと近づく物好きは必ずいる。
そんな物好きには、何故か硬く太い木で出来た太鼓の撥が上から落ちてきて、脳天を直撃する。
その痛みに悶絶していると大人達が笑みを浮かべ、こう言う。
「バチが当たったな」