不眠症の吸血鬼

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「朝、眠れないんです……。」

 患者は深刻な顔をしてそう言った。確かに顔色が悪いが、既に死んでいる訳だから顔色で判断はできない。だが目の下の隈が酷いせいで眼窩が窪み、やつれた弱々しさは花形西洋モンスターの面影がない。

「眠れなくなった心当たりは?」

「我々を怖がる人間ももはや居らず、仲間の話を聞かない事から、自分が最後の一人ではないかと考え始めて……。」

「なるほど。睡眠剤は出せますが、吸血鬼の貴方に効果があるかは……。それよりどうです?いっその事、朝、眠る習慣を変えてしまうというのは?」

「どういう事です?」

「つまりですね……。」


 数ヶ月後、あるお化け屋敷がバズった。昔ながらの洋館のお化け屋敷なのだが、入る度に仕掛けが変わると大人気だ。夏休みとも重なり、外には大勢の人が並んでいる。
 暗い窓辺で吸血鬼が生き生きした顔で微笑む。どうやら昼夜逆転治療は上手くいったようだ。
公開:24/06/16 18:39
更新:24/06/16 18:41

ぽんず

ぽんずとかねぎとか薬味と調味料。
(たまに作品整理をします。整理したSSはNovelDays等にあります)
http://lit.link/misonegi

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