磨王

若いころ排除した魔王が、新橋で靴磨き屋を始めたという噂を聞いた。俺はかつてのパーティで同行した仲間に連絡を取り、現地で落ち合うことにした。
午後六時。夕方の通勤ラッシュが始まる時間。人ごみのなかに、暗黒騎士ソラマメを見つけた。俺は手を挙げ、こちらに呼び寄せた。
「やぁやぁ、しばらくぶりでございますな。お元気でしたか？　銀の錬金術師アヤヤ殿」
「ハハッ！　その二つ名は二十年前に封印したんだ。やめてもらえると助かる」
「さようでございましたか！　それは失礼」
歩道橋の下に避難していることを伝えると、勇者タンポポと赤いエルフ（改）も合流した。みんなすっかりいいおじさんになっていた。
「さて、それじゃー、魔王の店を覗きに行きますか！」
俺の掛け声で様子を見に行ったが、魔王の店『磨王』はたいそう繁盛していて、外まで行列ができていた。
仕方なく隣の居酒屋に入り、二十年ぶりのオフ会を楽しんだ。