路面はどーだい？

「そこのお嬢ちゃん達！浴衣に路面はどーだい？」

綿あめ、焼き鳥、金魚掬い…両脇に所狭しと並び立つ夏祭りの屋台。どこから攻めよようか？なんて友人と話しながら歩いていると【路面屋】のおじさんに呼び止められた。

「おっちゃんが春夏秋冬、東奔西走で集めた路面から作った自慢のお面だ！」

散った桜の舞う路面、落ち葉がふわりと積もる路面、新雪で淡く化粧した路面…四季折々に見られる路面を丸く写し取ってお面にしたものらしい。美しさと珍しさに興味を惹かれ、私達は路面を買ってみた。友人は若草色の浴衣に合わせて木漏れ日の揺れる路面を、私は水玉模様の浴衣に合わせてカラフルな丸い影の落ちた路面を選んだ。早速頭につけようとすると、おじさんが「まずは顔につけてごらん」というので試してみる。すると、路面を通して見えた景色はその路面が見上げていた空で、私の路面からは色とりどりの傘の浮かぶアンブレラスカイが広がっていた。