旅の入門

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清十郎、秋彦、哲郎の三人が部屋に集まった。次の休暇の旅行の相談である。まず、旅について各自の考え方を述べることにした。
清十郎は、旅は何よりも教育的効果が重要だと言う。知らない事はもちろん知っていることでも現地現物に接して新しい知識を蓄えることができる。秋彦は、旅には象徴的な意味があると言う。卒業旅行、新婚旅行など旅には我々の人生に何らかの意味があって、どんな旅でもその象徴するところを明らかにせねばならないとする。哲郎は旅とは個人的な秘密の技術を磨く機会だと言う。彼はそれを秘技と呼ぶ。異世界での非日常な体験を経て誰にも知られない秘技的世界の構築こそ旅の意義だと主張する。
三人はテーブルを囲んで熱く主張しあって、テーブルをぐるぐると回りだす。行き先、スケジュール、予算などは何も語られない。彼らは某大学文学部の、専攻は何か知らないが大学院生である。おそらく今回の旅の計画も流れることだろう。
その他
公開:24/06/14 17:34

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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