ベランダでの出来事

「あたし、大きくなったらバレリーナになる！」

ベランダで踊る私を見て、幼女は言った。
私の踊りに皆、最初は興味を持ってくれる。だけど、すぐに飽きる。子どもならなおさらだ。
しかし彼女は飽きずに私の踊りを見ては、必死に真似をしようと小さな手足を動かした。
それを見て、貴方の両親は貴方をダンススクールに通わせた。
貴方には元々才能があった。少女になる頃には所作の美しさに私でさえ目を奪われ、その動きを止めてしまった。
負けてられない。私は私の体に染みついた踊りを必死に披露する。
滑稽かもしれない。意味がないかもしれない。だけど、踊らずにはいられなかった。

少女が女性になると世界が彼女に注目した。
世界的バレエダンサーとなった彼女は今、世界中を飛び回っている。
そんな貴方を私は相変わらずベランダで踊りながら見つめる。
１時間に１度、鳩時計の中からベランダへと現れてはテレビの中の彼女を応援する。