酒と水

0
3

「この映画父さん好きだったよなぁ」
 向かいに座る父さんは「好きだ!若い時は母さんとデートで観に行ったもんだ」当時を思い出したのか、目を細める。
「彼女は出来たのか?」
「いねーよ、仕事が楽しいの」
「あのなぁ〜、お前の気持ちも分からんでもないがな?歳なんてあっという間に過ぎるもんだ、忙しくないうちに結婚しとけ、はよ嫁を俺に見せろ〜」
「水しか飲んでないのに酔っ払ってる?ダッセー」
 父さんは「酒もやめろ」なんて付け足す。父さんは水しか飲まない、二年前からだ、俺が久々に帰省したら、家に飾られていた酒は一本を残し、全て無くなっていた。
「健康に悪い!」
「なら父さんは健康もクソも関係ないな、久し振りに呑めよ、アレ残ってるよ?」
 するとドアが開くなり母さんは「あら、懐かしいの観てるわね」と俺の向かいの席に座る。
「独りで晩酌なんて珍しいね、お父さんが居たら喜んで付き合ってくれたでしょうに」
その他
公開:24/06/06 22:45

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容