言葉ソフトボール

小さい頃、公園で父とよく言葉のキャッチボールをしていた。
父の投げかける言葉は優しく、受け取ると心がとてもポカポカする。
だから僕も父に優しく言葉を投げかける。僕の投げた言葉を受け取った父はニコニコして、それを見て僕はまた嬉しくなった。
小学生に上がると父は言葉でソフトボールをしようと言い出した。
父の投げかけてくる言葉を打ち返す。
僕の投げかけた言葉を父が打ち返す。
時々、力が入り過ぎて公園の近くに住むおじさんの家に言葉が飛んで行ってしまう事があった。
あのおじさんは盆栽が趣味のカミナリオヤジ。怖いことで有名な人だ。
そのおじさんが、盆栽を持って僕らの前にやってきた。
「さっきウチに飛んできた言葉が儂に当たって、この盆栽にも当たった。見ろ！この盆栽、話に花が咲いているぞ！」
そう言って笑うおじさんの頭にはタンコブ。
なんでやねん！と、思わずツッコんでしまい、僕らに笑顔の花が咲いた。