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そこは幽霊が出るカラオケボックスだった。
幽霊に会いたければ、一人でカラオケに行けばでいい。一人で歌っていると、顎鬚を生やしたおっさんが、勝手に壁をすりぬけて部屋に入ってくる。おっさんはにこにこしながら、合いの手を入れたり拍手をしたりして、場を盛りあげてくれる。でも、たまにすごく機嫌の悪いときがあって、「ぜんぜん上達しねえなあ」とか、「歌うのやめろ、このへたくそ!」とか、やじを飛ばしはじめる。
ぼくはその日、おっさんの幽霊に「おまえみたいな音痴は、カラオケに来るな!」と罵られ、思わずキレてしまった。
「じゃ、あんたが歌ってみろよ」とぼくが言うと、おっさんの幽霊は古いアニソンを歌いだした。信じられないくらいへたくそだった。
「……お上手ですね」
「ありがとう」とおっさんの幽霊は照れくさそうに言って、まるで綿あめが溶けたみたいにすうっといなくなってしまった。
幽霊に会いたければ、一人でカラオケに行けばでいい。一人で歌っていると、顎鬚を生やしたおっさんが、勝手に壁をすりぬけて部屋に入ってくる。おっさんはにこにこしながら、合いの手を入れたり拍手をしたりして、場を盛りあげてくれる。でも、たまにすごく機嫌の悪いときがあって、「ぜんぜん上達しねえなあ」とか、「歌うのやめろ、このへたくそ!」とか、やじを飛ばしはじめる。
ぼくはその日、おっさんの幽霊に「おまえみたいな音痴は、カラオケに来るな!」と罵られ、思わずキレてしまった。
「じゃ、あんたが歌ってみろよ」とぼくが言うと、おっさんの幽霊は古いアニソンを歌いだした。信じられないくらいへたくそだった。
「……お上手ですね」
「ありがとう」とおっさんの幽霊は照れくさそうに言って、まるで綿あめが溶けたみたいにすうっといなくなってしまった。
ファンタジー
公開:24/06/02 16:19
更新:24/06/02 16:22
更新:24/06/02 16:22
#カラオケ
#幽霊
#おっさん
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