フクノカミ

「フクノカミがこの街にやって来る！　みんな集まれ」
こんなチラシが郵便受けに入っていた。家から徒歩5分の公園に日曜午後1時にフクノカミが来るのだそうだ。

その日ひとりで公園に行ってみた。驚いた。公園にはあふれんばかりの人が集まっていた。
午後1時、真夏の暑い盛りの公園を何とも言えない爽やかな風が吹き抜けていった。その風には淡いブルーの色がついていた。不思議な風だった。公園にどよめきが起こった。「フクノカミが通った」と誰かが叫ぶと、静寂がおとずれた。暫くすると、人々は公園から帰って行った。あの一瞬の風の心地よさだけがいつまでも残っていた。
それで何かフクノカミの福はあったかって？　私は中3にして初めて夏休みの宿題が休み中に全部終わった。お母さんは宝くじで初めて1万円当たった。お姉ちゃんはオシのライブチケットが当選した。お父さんは会社で昇進した。それくらいかな。十分すぎる？　たしかに。