梅干しとお茶

0
2

私が小学生の頃、朝食の席には必ず梅干しが並んだ。
ひとりひと粒、小皿に盛られていたけど、梅干しが苦手だった姉と私は、こっそり元の容れ物に戻して食べるのを回避していた。
しかしある日、異変が起きた。
梅干しがないのだ。
あからさまに喜ぶと不自然なので、食後の緑茶を静かにすすった。食べ終わるのを見計らって、母が用意してくれたものだ。
でもその日は、先に緑茶を口にした姉がなんだか変な顔をしていた。
「お母さん、お茶っ葉、変えた?」
「変えてないよ」
「でも酸っぱいよ?」
「そりゃそうだよ。梅干し入りなんだから」
姉と私は絶句した。しかし母曰く、「梅干しは不運を遠ざけるおまじない」らしいのだ。そういえばテストの点は伸びないし、ともだちと絶交したと思い出した。姉にも思い当たる節はあったようだ。
以来、梅干し茶は定番になったけど、母亡き後、たまに会う姉とは、あれは地獄だったと苦笑いしている。
その他
公開:24/05/31 07:35
更新:24/05/31 07:36

いちいおと( japan )

☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。

清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選

ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容