ささやかなミルフィーユ

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延命措置を施して約500年、家政婦ロボのテレサが壊れた。料理は雑貨を煮詰め、掃除は大事な物を
捨ててしまう。
変化の乏しい生活を送っていた私は、彼女の変化に気付く事が出来なかった。
人間よりも機械の寿命が早く来る時代、それは報道で知っていたが自分事になるまで
実感が沸かなかったのは確かである。
私は焦った、だって唯一の家族だから。
古い型番の為、修理しようにも補償も無ければ部品も無い。

私は、自分自身の延命措置を停止する結論に至る。

相も変わらず、テレサは私の為に鉢植えを電子レンジにかけ、ボックステッシュを冷蔵庫にしまう。
そんなテレサを私は見守っている。
今まで何百年も変化の無い私の世話をしてくれたのだ。
私は、テレサのその壊れた仕草が酷く愛おしく思えた。

これからは、日々の変化に敏感になる努力を重ねよう。
私が、自分の変化に喜ぶ事の出来るその最期まで、時間を重ねよう。
SF
公開:24/06/03 01:19
更新:24/06/03 13:30

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