ジュヴゼム

　私の母国語で、愛しているの意味を持つ言葉に、あなたはゆっくりと聞き入った。だから、私はいくつも繰り返した。時折、別の言い回しで愛を囁きもした。
　指に力がこもると、あなたの手が内側でそっとからだをよじる。まるでくすぐったがっているみたいに。

　あなたの瞳は穏やかで、愛の言葉は通り過ぎていく。水のあるところのようだと、思う。それは川や、海や、頭まで潜って、光がぶれるところ。
　水の中で声は聴こえない。
「本当は、きみの言っていることが分かるよ」
　あなたが何か、言った。彼の声も好きだ。耳にしっとりと馴染む、ちょうどよい高さ、ちょうどよい響き。一対の貝であったらよかったのに、私の耳と、彼の声が。

「ごめんね。応えられなくて」

　あなたは、あなたの母国語で笑う。
　あなたは何と言ってくれたのだろう。愛しているを、返してくれたのだろうか。