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我が家には高さ五十センチほどの椿がある。瑠璃色の鉢で青々とした葉を盛大に拡げているが、実は一度、枯れてしまったことがあった。
あれは二年前の初夏。
遊びに来た甥が、いくつか成っていた椿の種をつまみ取り、小さな足で踏みつけたのだ。
種は固いから大人が全体重をかけても潰れないが、前日の雨でぬかるんだ地面にはいとも簡単にのめり込んでしまった。
それにひどく怒ったのは祖母だった。
「そんなことしたらバチが当たるぞ。その椿は土地神様の化身なのだからな」
祖母が仁王像の如くらんらんと瞳を輝かせるので、火がついたように泣きだした甥をなだめるのにかなりの時間を要したことを覚えている。
数ヶ月後、祖母は眠るように息を引き取ったが、ほぼ同時に椿も枯れてしまった。
後で知ったことだが、椿は、祖母が生家から譲り受けた苗だったそうだ。
間もなく祖母の三年忌。生気を取り戻した椿は、丁寧に地植えしてあげるつもりだ。
あれは二年前の初夏。
遊びに来た甥が、いくつか成っていた椿の種をつまみ取り、小さな足で踏みつけたのだ。
種は固いから大人が全体重をかけても潰れないが、前日の雨でぬかるんだ地面にはいとも簡単にのめり込んでしまった。
それにひどく怒ったのは祖母だった。
「そんなことしたらバチが当たるぞ。その椿は土地神様の化身なのだからな」
祖母が仁王像の如くらんらんと瞳を輝かせるので、火がついたように泣きだした甥をなだめるのにかなりの時間を要したことを覚えている。
数ヶ月後、祖母は眠るように息を引き取ったが、ほぼ同時に椿も枯れてしまった。
後で知ったことだが、椿は、祖母が生家から譲り受けた苗だったそうだ。
間もなく祖母の三年忌。生気を取り戻した椿は、丁寧に地植えしてあげるつもりだ。
その他
公開:24/05/30 09:00
更新:24/05/27 10:30
更新:24/05/27 10:30
☆やコメントありがとうございます✨
以前のアカウントにログインできなくなってしまい、つくりなおしました。
清流の国ぎふショートショート文芸賞 入選
ときどき短編〜長編も書いています(別名義もあります)
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