消しゴムかけ
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地獄は透明な肌をしてゐて身体の中が透けて見えるやうだつた。
その周りを純真な人たちが取巻いてゐて、その一人がこちらに近寄ると友人に消しゴムを渡した。
友人は立ち上がると取巻きに混じり、左手でそつと、地獄の肌に触れた。
笑った、やうに見えた。
さうして地獄の肌に消しゴムをかけはじめる。
ゴシゴシ、ゴシゴシ、ゴシゴシ、キュツ……。
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ、キュツ、キュツ……。
地獄は気持ちよいのか、時折ブトウルル、と身震ひする。
その肌はますます透明度を増して輝くばかりで、それに呼応するかに消しゴムかけはだんだん激しさを増してゆく。
そして、今度は確実に、笑つてゐる。
とても楽しさうだ――さう思つたとき、友人は手を止め消しゴムとそれを持つ指とを見つめた。
消しゴムは黒く汚れ、あの、本当は白く細い指も黒にべつたり塗れてしまつてゐた。
ああ、どうかその指で書いて欲しい。
地獄に、私の名前を。
その周りを純真な人たちが取巻いてゐて、その一人がこちらに近寄ると友人に消しゴムを渡した。
友人は立ち上がると取巻きに混じり、左手でそつと、地獄の肌に触れた。
笑った、やうに見えた。
さうして地獄の肌に消しゴムをかけはじめる。
ゴシゴシ、ゴシゴシ、ゴシゴシ、キュツ……。
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ、キュツ、キュツ……。
地獄は気持ちよいのか、時折ブトウルル、と身震ひする。
その肌はますます透明度を増して輝くばかりで、それに呼応するかに消しゴムかけはだんだん激しさを増してゆく。
そして、今度は確実に、笑つてゐる。
とても楽しさうだ――さう思つたとき、友人は手を止め消しゴムとそれを持つ指とを見つめた。
消しゴムは黒く汚れ、あの、本当は白く細い指も黒にべつたり塗れてしまつてゐた。
ああ、どうかその指で書いて欲しい。
地獄に、私の名前を。
ファンタジー
公開:24/05/29 21:12
1978~。西成郡勝間村の人。単家、布衣の人。短時間労働者。即興演奏者。
俳句雑誌『奎』同人。
2022年イグBFC3優勝(同着)
https://twitter.com/ConchHailuo
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