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場末のバーで愚痴をこぼしていたら「願いをかなえてあげます」という男と出会い、想像するだけで人を殺せる能力を手に入れた。どうしても殺したい男がいた俺は、能力を手に入れるや否や「死ね」と念じた。すると間髪入れずに、男が「駄目です」といった。
「念じるのではなく、想像しなければ駄目です」
「想像って何を?」
「死を」
「死?」
男は頷くと、窓の外で嘔吐している男を指さした。男は突然倒れ、動かなくなった。
「死です」
俺は動転した。
「なんで? どうやって? まさか、俺に見せるためだけに無関係な人間を殺したのか?」
男は微笑んだ。
「そんな疑念を抱くようでは、力は発揮できません」
「どうすればいい?」
そして男と旅に出た。
10年後、俺は男の境地に達した。男は去った。殺したい男を殺した。充足も後悔も、なにもなかった。
それからも時折、なんの感興もなくこの力を使う。なぜだかわからない。
「念じるのではなく、想像しなければ駄目です」
「想像って何を?」
「死を」
「死?」
男は頷くと、窓の外で嘔吐している男を指さした。男は突然倒れ、動かなくなった。
「死です」
俺は動転した。
「なんで? どうやって? まさか、俺に見せるためだけに無関係な人間を殺したのか?」
男は微笑んだ。
「そんな疑念を抱くようでは、力は発揮できません」
「どうすればいい?」
そして男と旅に出た。
10年後、俺は男の境地に達した。男は去った。殺したい男を殺した。充足も後悔も、なにもなかった。
それからも時折、なんの感興もなくこの力を使う。なぜだかわからない。
ファンタジー
公開:24/05/29 20:34
新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。
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