圧力メール

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「課長、どうしたんすか?」
「うむ、来月納品の件だがね、顧客の意向で明後日だ。それで下請のA社に明日、加工品を納めてもらいたい」
「明日!そりゃ無理すよ。一ヶ月も前倒しなんて」
「A社の内情を知っている。死ぬ気でやれば明日の夕方にはちゃんと届くはずだ、だけど」
「だけど?」
「言い方が難しい。納期短縮を威圧的に命じるとハラスメントになる」
「優しくいうと断られるし」
「昔は電話でうまく言ったものだ。頼むよって言って、数秒無言の沈黙、で受話器を置く。この沈黙の間が大事。口では優しくお願いして沈黙の圧力。これでうまくいったんだが。メールでは・・」
「そのメール、任せてくださいっす」
と部下が書いたメールが、・・お願いします。の後に鬼の顔の絵文字が四つ。鬼の顔は明るい。
「うん、鬼はいいな。絵文字は四つ?」
「三つや五つはだめ、四つが微妙に圧力を伝えるっすよ」
そのメールを俺はA社に送信した。
その他
公開:24/05/29 09:05

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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