綿飴みたいな奴

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 迂闊だった。徒歩10分の郵便局だからといって傘を持ってこなかったのが悪かった。徒歩の10分プラス郵便局での処理の時間を含めた約15分の間に雨が降ってきてしまった。男は自動ドアの前でどうすべきかと逡巡している。こうしている間にも雨の胴体は太くなり、勢いはさらに増すばかりだ。家までは走れば5分で着くだろう。男は意を決して濡れるアスファルトに飛び出た。
 脹脛に跳ねる水も構わず男は走った。男の眼は2倍速で過ぎ去る世界を捉えている。すると半分を過ぎた地点で男の頭が溶け出してきた。どこからか甘い匂いが漂ってくる。溶け始めてから数十秒、男の頭は完全に溶け切ってしまった。次いで胴体、脚が溶け始める。服やズボンが脱ぎっぱなしの状態で地面を這う。男が自宅の扉を前にした頃には靴だけになっていた。そしてその靴も二度と扉の前から動くことはなかった。甘い砂糖菓子の匂いだけが低い位置で辺りに漂っている。
ファンタジー
公開:24/05/28 21:32
更新:24/05/29 02:34

おいしい舞茸( きょーと )

舞茸です。
舞茸そのものです。

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