2
3

出会いは夏祭りの帰り。雑踏の隙間、沿道に蹲っていた彼女の焦燥感は暗中でも伝わった。どうやら鼻緒が切れてしまったらしい。僕を見上げる彼女はアーモンド形の美しい目をしており、決して高くはないが筋の通った鼻、後ろで束ねられている線の細い黒髪は艶やかに光っていた。そして最も印象的だったのが、林檎飴のように真っ赤に輝く彼女の唇だ。僕はその薄くも厚くもない彼女の唇に魅了された。
 この出会いが契機となり、僕と彼女は付き合うことになった。僕たちは様々な所を旅した。そして行く先々、彼女の唇の赤が失われることはなかった。僕はそれを嬉しいと思う反面、何処にでもその唇を振り撒く彼女を嫌悪していた。この醜い感情が高まっていた頃、彼女はトラックに轢かれて死んだ。居合わせた人の証言によると見るも無惨、「ぐちゃぐちゃ」だったらしい。そして彼女の赤い唇もまた、その「ぐちゃぐちゃ」の一部だった。
ホラー
公開:24/05/22 22:18
更新:24/06/05 02:01

おいしい舞茸( きょーと )

舞茸です。
舞茸そのものです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容